結論|家賃が入金されないときは「入居者の滞納」と「管理会社の未送金」を区別する
投資用マンションを所有していると、毎月決まった日に家賃が振り込まれることが当たり前になりがちです。
ところが、ある月から突然、家賃の入金が止まったらどうでしょうか。
管理会社へ問い合わせても、
「経理処理が遅れています」
「担当者が不在です」
「来週には振り込みます」
といった回答が続き、なかなか入金されない。
このような場合、まず確認すべきことがあります。
家賃が振り込まれない原因は、必ずしも入居者の家賃滞納とは限らないということです。
入居者が管理会社へ正常に家賃を支払っているにもかかわらず、管理会社からオーナーへの送金が行われていないケースも考えられます。
その場合は、次の5点を確認することが重要です。
- 入居者から管理会社へ家賃が入金されているか
- 管理会社との契約で定めた送金日はいつか
- 未送金額はいくらか
- 管理会社が送金できない理由は何か
- 管理会社を変更する必要があるか
家賃未送金トラブルでは、未払い金の回収と、今後の家賃収入を守るための対応を並行して検討することが重要です。
【解決事例】家賃92,000円の投資用マンションで2か月分の送金が停止
物件と管理契約の概要
38歳の会社員Aさんは、東京都内に投資用ワンルームマンションを所有していました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 物件所在地 | 東京都内 |
| 築年数 | 17年 |
| 間取り | 1K |
| 専有面積 | 約25㎡ |
| 月額家賃 | 92,000円 |
| 賃貸管理手数料 | 家賃の5% |
| 月額管理手数料 | 4,600円 |
| 通常の月額送金額 | 87,400円 |
| 管理委託期間 | 約3年 |
| 入居状況 | 入居中 |
| 家賃集金方法 | 管理会社による収納代行 |
※管理手数料以外の控除や消費税の取扱いは、計算を簡潔にするため省略しています。
Aさんは、入居者対応や家賃集金を管理会社へ任せていました。
家賃は毎月管理会社が集金し、管理手数料を差し引いた金額がAさんの口座へ振り込まれる仕組みです。
これまで大きな問題はなく、Aさんは管理会社の業務を信頼していました。
ところが、ある月の送金予定日を過ぎても、家賃が振り込まれませんでした。
問題発生|「経理処理の遅れ」と説明されたが、翌月も入金されない
Aさんは、管理会社へ電話しました。
すると担当者から、
「経理処理の関係で送金が遅れています」
と説明されました。
Aさんは数日待ちましたが、入金はありません。
再度問い合わせると、
「確認して折り返します」
という回答でした。
しかし、その後も具体的な説明はありませんでした。
そして翌月。
再び家賃の送金予定日を迎えましたが、2か月目の家賃も振り込まれませんでした。
通常の送金額は月額87,400円です。
したがって、
87,400円×2か月=174,800円
の未送金が発生したことになります。
Aさんは、住宅ローンの返済を自己資金で補うことになりました。
問題点①|入居者が滞納しているのか、管理会社が送金していないのか
最初に確認すべきなのは、家賃がどこで止まっているのかという点です。
家賃の流れは、通常、次のようになっています。
入居者 → 賃貸管理会社 → オーナー
今回のケースでは、Aさんが管理会社から受け取る予定だった金額が入金されていません。
しかし、それだけでは原因は分かりません。
考えられる原因には、次のようなものがあります。
| 原因 | 状況 |
|---|---|
| 入居者の家賃滞納 | 入居者から管理会社へ入金されていない |
| 送金事務の遅延 | 入金済みだが送金処理が遅れている |
| 精算内容の相違 | 修繕費等が控除され、送金額に差がある |
| 管理会社の資金管理上の問題 | 受領した家賃を適切に送金できていない |
| 管理会社の経営悪化 | 資金繰り等の問題で送金が停止している可能性がある |
重要なのは、送金が遅れているという事実だけで、管理会社による横領や倒産を断定しないことです。
まずは家賃の入金記録と送金記録を確認する必要があります。
【解決までの流れ①】管理会社へ家賃の入金明細を請求
Aさんは、管理会社へ次の資料を求めました。
- 対象月の家賃入金明細
- 入居者からの入金日
- 管理手数料等の控除明細
- オーナーへの送金予定日
- 未送金額の内訳
- 送金が遅れている理由
管理会社から提出された資料によると、入居者は2か月とも期日どおりに家賃を支払っていました。
つまり、入居者の家賃滞納ではなく、管理会社からオーナーへの未送金が問題になっていたのです。
Aさんは、入居者に対して督促するのではなく、管理会社との契約関係を確認することにしました。
問題点②|管理会社が受け取った家賃は自由に使ってよいのか?
ここで関係するのが、**賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)**です。
賃貸住宅管理業法とは?
賃貸住宅管理業法は、賃貸住宅の管理業務を適正化するための法律です。
一定規模以上の賃貸住宅管理業者に登録を義務付けるほか、登録業者に対して管理受託契約に関する説明、財産の分別管理、定期報告などを求めています。
国土交通省によると、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者には、国土交通大臣への登録が義務付けられています。
ただし、家賃等の金銭管理のみを行い、住宅の維持保全業務を行わない事業は、同法上の賃貸住宅管理業に該当しません。
したがって、管理会社という名称で営業している事業者すべてに、同じ規制が適用されるわけではありません。国土交通省
問題点③|賃貸住宅管理業法の「分別管理」とは?
分別管理の意味
分別管理とは、管理会社が入居者等から受け取った家賃・敷金などを、自社の固有財産と区別して管理することです。
賃貸住宅管理業法第16条では、対象となる賃貸住宅管理業者に対し、受領した家賃・敷金等の分別管理を求めています。
国土交通省は、具体的な管理方法として、受領金銭の専用口座と自己の固有財産の口座を分けることや、管理受託契約ごとの金銭を帳簿等で判別できるようにすることを示しています。国土交通省
ただし、注意したい点があります。
分別管理の義務があることと、管理会社が倒産した場合にオーナーの家賃が必ず全額保護されることは同じではありません。
倒産時にどのような権利を主張できるかは、契約関係、金銭の管理状況、財産の帰属、倒産手続などによって異なります。
【解決までの流れ②】管理委託契約書を確認
Aさんは、管理会社と締結していた管理委託契約書を確認しました。
契約書には、家賃の送金日と管理手数料について記載されていました。
しかし、未送金が発生した場合の具体的な対応方法については、十分に確認できていませんでした。
Aさんは、契約書に記載された送金日を基準として、管理会社へ正式な説明を求めました。
ここで重要なのは、電話でのやり取りだけに頼らないことです。
未送金額、対象期間、支払期限、回答期限を明確にした書面やメールを残すことが、後の交渉で役立ちます。
【解決までの流れ③】未送金家賃174,800円の支払いを求める
Aさんは、管理会社へ書面で連絡しました。
主な内容は次のとおりです。
未送金対象:2か月分
未送金額:174,800円
確認事項:入居者からの家賃入金状況
要求事項:未送金額の支払いと遅延理由の説明
回答期限:書面到達後7日以内
管理会社からは、資金管理上の問題により送金が遅れている旨の説明がありました。
ただし、会社の財務状況や倒産の危険性まで確認できたわけではありません。
Aさんは、未送金額の回収だけでなく、今後の家賃についても同じ問題が発生する可能性を考えました。
【解決までの流れ④】管理会社を変更する準備を進める
Aさんは、別の賃貸管理会社へ相談しました。
新しい管理会社には、
家賃集金、
入居者対応、
設備トラブルへの対応、
更新手続、
退去立会い
などを依頼することを検討しました。
一方、従来の管理会社との契約を終了するためには、契約書の解約条項や通知期間を確認する必要があります。
また、旧管理会社が保有している情報の引継ぎも重要です。
具体的には、
賃貸借契約書、
入居者情報、
家賃入金履歴、
敷金・預り金の管理状況、
鍵の管理状況、
保証会社との契約関係
などを確認します。
家賃未送金が発生したら、すぐ入居者へ振込先変更を通知してよい?
ここは慎重な対応が必要です。
管理会社を変更する場合、家賃の振込先や集金方法を変更することがあります。
しかし、旧管理会社との契約関係や収納権限が整理されていない段階で、入居者へ一方的に別口座への支払いを求めると、混乱が生じる可能性があります。
特に避けたいのが、入居者が旧管理会社へ家賃を支払ったにもかかわらず、新しい管理会社からも同じ月の家賃を請求される事態です。
管理会社変更時には、次の事項を明確にする必要があります。
- 旧管理会社の集金権限が終了する日
- 新しい集金方法が始まる日
- どの月の家賃から振込先が変わるのか
- 旧管理会社が受領済みの家賃をどう精算するのか
- 入居者へ誰が、どのような方法で通知するのか
管理会社の未送金問題を、入居者との二重請求トラブルに発展させないことが重要です。
【解決結果】未送金家賃を回収し、管理会社を変更
今回のケースでは、Aさんが管理会社へ書面で支払いを求めた結果、未送金額174,800円について精算方法の合意が成立しました。
管理会社は、まず87,400円を支払い、残額87,400円についても合意した期日までに送金しました。
Aさんは入金を確認し、未送金額の全額回収を確認できました。
その後、旧管理会社との管理委託契約を合意により終了しました。
新しい管理会社への引継ぎも行い、家賃の収納方法を変更しました。
解決結果の整理
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 未送金期間 | 2か月 |
| 未送金額 | 174,800円 |
| 入居者の家賃滞納 | なし |
| 未送金額の回収 | 全額回収 |
| 管理委託契約 | 合意終了 |
| 新しい管理会社 | 変更完了 |
| 解決までの期間 | 約2か月 |
今回の解決ポイントは、未送金額の回収だけでなく、今後の家賃収入を確保するために管理体制を見直したことです。
管理会社が倒産した場合、未送金家賃は取り戻せる?
管理会社が倒産した場合、未送金家賃を回収できるかどうかは、個別の事情によって異なります。
例えば、破産手続が開始された場合には、契約関係や財産の帰属を確認したうえで、破産債権の届出等が必要になる可能性があります。
ただし、未送金家賃がどのように扱われるかは、金銭の管理方法や権利関係によって異なります。
「管理会社が分別管理していたから必ず全額返ってくる」とは限りません。
管理会社の倒産が疑われる場合は、通常の送金遅延とは異なる対応が必要になることがあります。
早い段階で弁護士等へ相談し、契約書、入金記録、送金明細、管理会社とのやり取りを保存しておくことが重要です。
管理会社が家賃を送金しない場合、行政へ相談できる?
賃貸住宅管理業法の適用対象となる事業者について、法令違反が疑われる場合は、国土交通省の地方整備局等への相談・情報提供が考えられます。
ただし、家賃の送金遅延があれば、必ず賃貸住宅管理業法違反になるというわけではありません。
また、行政による指導・監督と、オーナーが未送金家賃を回収するための民事上の手続は別の問題です。
国土交通省のFAQでも、管理会社の対応の良し悪しがすべて行政指導の対象になるわけではなく、原則として法令上の義務違反等が問題になる場合に対応すると説明されています。国土交通省 関東地方整備局
未送金家賃の回収を目的とする場合は、管理委託契約の内容を確認し、必要に応じて弁護士等へ相談することが重要です。
家賃未送金を防ぐために、オーナーが確認したい5つのポイント
①毎月の送金日を確認する
管理委託契約で定められた送金日を把握し、入金状況を毎月確認します。
②家賃の入金明細を確認する
送金額だけでなく、入居者からの入金額、管理手数料、修繕費等の控除内容を確認します。
③管理会社の登録状況を確認する
賃貸住宅管理業法上の登録対象となる事業者については、登録状況を確認することも重要です。
ただし、登録されていることだけで、将来の送金や経営の安全性が保証されるわけではありません。
④家賃・敷金等の管理方法を確認する
管理会社が受領した金銭をどのように管理しているか、管理受託契約の内容や説明資料を確認します。
⑤管理会社変更時の引継ぎ条件を確認する
契約終了時に、入居者情報、契約書、家賃入金履歴、敷金等が適切に引き継がれるか確認します。
要点整理
管理会社による家賃未送金とは?
家賃未送金とは、賃貸管理会社が入居者から家賃を受領しているにもかかわらず、契約で定められた期日までにオーナーへ送金していない状態を指します。
入居者による家賃滞納とは異なるため、原因を分けて確認する必要があります。
家賃未送金が発覚した場合の対応手順
- 管理委託契約書で送金日を確認する
- 管理会社へ家賃入金明細を求める
- 入居者からの入金状況を確認する
- 未送金額を計算する
- 送金遅延の理由を書面で確認する
- 支払期限を明示して精算を求める
- 管理会社の登録状況や契約上の義務を確認する
- 管理会社変更の必要性を検討する
- 入居者への振込先変更通知を適切に行う
- 回収が困難な場合は弁護士等へ相談する
家賃未送金トラブルでは、「過去の未送金額の回収」と「今後の家賃収入の確保」を分けて対応することが重要です。
FAQ|管理会社の家賃未送金に関するよくある質問
Q1.管理会社から家賃が振り込まれない場合、まず何をすればよいですか?
管理委託契約書で送金日を確認し、管理会社へ家賃の入金明細と未送金理由を求めましょう。入居者の滞納なのか、管理会社からの未送金なのかを区別することが重要です。
Q2.管理会社が家賃を送金しない場合、すぐに契約解除できますか?
契約内容や未送金の程度によって判断が異なります。契約上の解約条項や債務不履行の状況を確認する必要があります。解除を検討する際は、入居者対応や家賃集金の引継ぎも併せて準備しましょう。
Q3.管理会社が受け取った家賃を使い込んでいた場合、犯罪になりますか?
具体的な事実関係によっては刑事上の問題が生じる可能性があります。ただし、送金遅延だけで横領等の犯罪が成立すると断定することはできません。証拠を整理し、必要に応じて弁護士等へ相談してください。
Q4.管理会社が倒産したら、家賃は全額返ってきますか?
全額回収できるとは限りません。契約内容、金銭の管理状況、財産の帰属、倒産手続などによって異なります。倒産が疑われる場合は、早めに専門家へ相談することが重要です。
Q5.管理会社を変更すれば、未送金家賃も新しい管理会社が回収してくれますか?
管理会社を変更しただけで、過去の未送金家賃が自動的に回収されるわけではありません。旧管理会社に対する請求と、新管理会社への業務引継ぎは別の問題です。新管理会社が対応できる業務の範囲も確認する必要があります。
管理会社から家賃が振り込まれず、お困りのオーナーへ
投資用マンションを所有していると、
「管理会社から家賃が振り込まれない」
「送金が何週間も遅れている」
「問い合わせても明確な説明がない」
「入居者は支払っているのに、オーナーへ入金されない」
「管理会社を変更したいが、契約や引継ぎが不安」
といった問題が発生する場合があります。
家賃の未送金は、単なる事務処理の遅れで済む場合もあれば、管理会社の資金管理や経営状況に問題が生じている場合もあります。
重要なのは、未送金の原因を確認し、回収方法と今後の管理体制を整理することです。
一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用不動産の賃貸管理に関するトラブルについて、状況整理のためのご相談を受け付けています。
例えば、
管理委託契約書、
家賃送金明細、
入金履歴、
管理会社とのメール、
未送金額の一覧、
賃貸借契約書
などを確認し、問題点を整理します。
また、管理会社との関係を継続するべきか、変更を検討するべきか、物件の売却を含めて今後の運用方針を見直すべきかについても、状況に応じた検討が重要です。
家賃の未送金が続いている場合は、問題を長期間放置せず、早めに資料を整理することをおすすめします。
投資用マンションの家賃未送金、管理会社とのトラブル、管理会社変更、売却相談については、一般社団法人 不動産トラブル解決協会へご相談ください。
参考法令・公的資料
本記事は、以下の公的資料を参考に作成しています。
賃貸住宅管理業者の登録、管理受託契約、財産の分別管理、オーナーへの定期報告等について解説しています。制度概要ハンドブックは2024年6月11日改訂版が掲載されています。
賃貸住宅管理業法の制度概要、登録制度、相談・違反通報窓口等を案内しています。
管理戸数200戸以上の登録義務、適用対象、行政指導の対象となる問題等について解説しています。
4.国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国立入検査結果(令和7年度)」
2026年6月5日公表。全国168社への立入検査と118社への是正指導について報告しています。
管理委託契約の内容を確認する際の参考となる標準契約書です。
記事の注意事項
本記事は2026年10月14日時点で確認できる公開情報を踏まえた一般的な解説です。
人物、物件、家賃、管理手数料、未送金額、交渉経緯、回収結果、管理会社変更の経緯等は架空のモデルケースです。
実際の家賃未送金、管理委託契約の解除、損害賠償、倒産時の債権回収、賃貸住宅管理業法違反の有無は、契約内容や個別事情によって異なります。具体的な対応では、最新の法令と契約書等を確認し、必要に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。

