投資用マンションに「契約者ではない人」が住んでいたらどうする?

投資用ワンルームマンションを所有していると、管理会社から突然、

「契約者本人ではない人物が居住している可能性があります」

と連絡を受けることがあります。

契約者へ確認すると、

「友人を住ませているだけです」

「自分も時々利用しています」

「家賃は自分が払っているので問題ないと思っていました」

と説明されるケースがあります。

しかし、家賃が正常に支払われているからといって、必ずしも問題がないとは限りません。

民法612条では、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸したりできないことが原則として定められています。

ただし、**「契約者以外が住んでいる=必ず無断転貸=直ちに契約解除できる」**と機械的に判断できるわけではありません。

家族・同居人なのか、単なる一時滞在なのか、実際に第三者へ部屋を貸しているのかなど、事実関係を確認する必要があります。


【解決事例】売却査定のため確認したところ、契約者とは別の人物が居住

会社員のAさんは、東京都内に約25㎡のワンルームマンションを所有していました。

購入から数年間、大きなトラブルはなく、

家賃:月額89,000円

も毎月正常に入金されていました。

Aさん自身は遠方に住んでいたため、入居者対応を管理会社へ任せていました。

その後、資産整理のためマンションの売却を検討。

査定を依頼した際、管理会社が入居状況を確認したところ、

契約者本人とは別の人物が継続的に居住している可能性

が浮上しました。

契約者へ確認すると、

「知人に住んでもらっている。家賃は自分が払っているので問題ないと思っていた」

との回答。

オーナーであるAさんは、その人物が住んでいることをまったく知りませんでした。


なぜ「家賃が入っているのに問題」なのか?

Aさんは最初、

「毎月89,000円が振り込まれているなら、そのままでもいいのでは?」

と考えました。

しかし、問題は家賃だけではありません。

契約者と実際の居住者が異なる状態では、

事故や設備トラブルが起きたとき誰と連絡を取るのか、入居者情報は正しいのか、火災保険等の条件に問題はないか、管理規約に抵触していないか、といった別のリスクが発生します。

さらに将来退去を求める必要が生じた場合、

「実際に誰が住んでいるのか分からない」

という状態そのものが問題になります。

投資用不動産では、

家賃が入っていることと、賃貸管理が正常であることは別問題

なのです。


【解決までの流れ①】まず「誰が住んでいるのか」を確認

Aさんが最初に行ったのは、

「無断転貸だからすぐ退去してください」

と通知することではありませんでした。

まず事実関係を整理しました。

確認したのは、

賃貸借契約上の契約者/届出済みの同居人/現在の実際の居住者/居住開始時期/契約者本人の居住実態/第三者との金銭授受の有無

です。

特に重要なのが、

第三者へ部屋を貸しているのか

という点です。

契約者の家族が一時的に滞在しているケースと、契約者が第三者から家賃を受け取って部屋を貸しているケースでは、事実関係が異なります。


【解決までの流れ②】賃貸借契約書を確認

次に確認したのが賃貸借契約書です。

特に、

転貸禁止条項/賃借権譲渡禁止条項/同居人に関する条項/用途制限/契約違反時の解除条項

を確認しました。

「又貸しは禁止です」

という一般的な理解だけではなく、

現在起きている事実が契約書のどの条項に関係するのか

を整理することが重要です。


【解決までの流れ③】「無断転貸=即解除」と決めつけない

民法612条では、賃借人が賃貸人の承諾を得ず第三者に賃借物を使用・収益させた場合、賃貸人が契約を解除できる旨が規定されています。

一方、実際の契約解除については、判例上、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できないことがある、という考え方があります。

したがって、

「契約者以外の人が住んでいる」

という事実だけを確認して、直ちに鍵交換などの実力行使を行うのは避けるべきです。

解除・明渡しまで進める場合には、事実関係と契約内容を整理したうえで、必要に応じて弁護士等へ確認することが重要です。


【解決までの流れ④】契約者へ正常化の方法を提示

今回のケースでは、契約者との連絡は取れていました。

そこで、

現在の状態をそのまま放置しない

という方針で協議しました。

選択肢として検討したのは、

①第三者の居住を終了させ、契約者本人の契約状態へ戻す

または、

②現在の契約を終了させ、適切な審査・手続きを経て新たな契約関係を構築する

といった方法です。

どの方法が適切かは、現在の居住者の属性、契約内容、管理規約等によって異なります。

重要なのは、

「知らない人が住んでいる状態」を既成事実として放置しないこと

です。


【解決までの流れ⑤】売却前に賃貸借関係を正常化

Aさんが無断転貸問題を確認したきっかけは、マンションの売却でした。

投資用マンションでは、入居者付きの状態でオーナーチェンジ売却することがあります。

その際、買主は、

賃貸借契約書、家賃、敷金、保証会社、入居者属性、滞納状況

などを確認します。

ところが、

「契約者Aさん、実際の居住者Bさん」

という状態では、買主側から追加確認を求められる可能性があります。

そこで今回のケースでは、売却を急ぐのではなく、まず賃貸借関係の正常化を優先しました。


【解決結果】居住関係を整理してからオーナーチェンジで売却

契約者との協議を進めた結果、第三者の居住状態を解消。

管理会社でも改めて入居状況・契約関係を確認しました。

その後、

契約者・居住者・家賃支払者の関係が明確な状態

にしたうえで売却活動を開始。

結果として、入居者付きの投資用マンションとしてオーナーチェンジ売却を進めることができました。

このケースの重要なポイントは、

家賃滞納がなかったため、問題の発見が遅れたこと

です。


投資用不動産の知識|「家賃が入っている=正常運用」ではない

投資用マンションの運用状況を見るとき、多くのオーナーが確認するのは、

家賃が振り込まれているか

です。

もちろん重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

最低でも定期的に、

契約者/実際の居住者/保証会社/家賃額/契約更新状況/管理会社の連絡履歴

を確認することが重要です。

特に長期入居の場合、

オーナー自身が、

「現在誰が住んでいるのか分からない」

という状態にならないよう注意しましょう。


無断転貸と「無断民泊」は何が違う?

ワンルームマンションでは、さらに注意したいのが民泊利用です。

契約者が第三者へ継続的に部屋を貸しているケースだけでなく、不特定多数の宿泊者へ短期間で繰り返し利用させている場合があります。

この場合、

賃貸借契約だけではなく、

マンション管理規約や住宅宿泊事業法等との関係

も確認が必要になる可能性があります。

特に分譲マンションでは、管理規約によって民泊を禁止しているケースがあります。

そのため、

「契約者以外の人を見かける」

という情報が管理会社や管理組合から入った場合、

無断転貸なのか、無断民泊なのか

まで確認することが重要です。


無断転貸が発覚したらオーナーはどうする?

無断転貸とは、原則として賃借人が賃貸人の承諾を得ずに、第三者へ賃借物を使用・収益させることです。

投資用マンションで契約者以外の人物の居住が判明した場合は、

契約者確認 → 居住者確認 → 賃貸借契約書 → 同居人届 → 転貸の有無 → 金銭授受 → 管理規約 → 正常化方法 → 必要に応じて専門家確認

という順番で整理します。

重要なポイントは次のとおりです。

  • 契約者以外が住んでいるだけで無断転貸と即断しない
  • 誰が・いつから・どのような理由で住んでいるか確認する
  • 第三者との金銭授受を確認する
  • 賃貸借契約書の転貸禁止条項を確認する
  • 無断民泊の可能性も確認する
  • 自己判断で鍵交換や荷物処分をしない
  • 売却前には賃貸借関係を整理する

投資用不動産では「家賃が正常」だけでなく「契約関係が正常」であることが重要です。


無断転貸を防ぐためにオーナーができること

再発防止では、管理会社との情報共有が重要です。

例えば管理委託時に、

契約者以外の長期居住が疑われる場合は報告してもらう

という運用ルールを確認しておきます。

また、更新時には単に契約書を更新するだけでなく、

連絡先・勤務先・同居人・保証会社等に変更がないか

を確認する方法もあります。

長期間同じ入居者が住んでいる物件ほど、

「問題が起きていないから確認しなくていい」

ではなく、定期的な契約情報の確認が重要になります。


よくある質問(FAQ)

目次

Q1.契約者以外の人が住んでいたら必ず無断転貸ですか?

必ずとは限りません。家族・同居人・一時的な滞在など、事情によって異なります。まず実際の居住状況と契約内容を確認する必要があります。

Q2.無断転貸ならすぐ契約解除できますか?

一律には判断できません。民法612条との関係に加えて、具体的な事実関係や過去の裁判例上の考え方等も踏まえる必要があります。具体的な解除を検討する場合は弁護士等へ確認してください。

Q3.家賃が毎月支払われていても問題になりますか?

問題になる可能性があります。家賃の支払いと、契約上適切な人物が居住しているかどうかは別の問題です。

Q4.知らない人が住んでいる状態でも売却できますか?

売却を検討すること自体は可能ですが、買主の確認事項や価格評価に影響する可能性があります。売却前に契約関係を整理しておくことが望ましいでしょう。

Q5.無断で民泊として使われていた場合は?

賃貸借契約だけでなく、管理規約や住宅宿泊事業法等の確認が必要になる場合があります。事実関係を確認し、必要に応じて管理組合や専門家等と対応を検討します。



「契約者と違う人が住んでいる」と分かったオーナーへ

投資用マンションの無断転貸問題で避けたいのは、

「家賃が入っているから問題ない」と放置すること

と、

「無断転貸だからすぐ追い出せる」と自己判断すること

の両方です。

「契約者本人が住んでいない」「知らない人物が住んでいる」「知人へ又貸ししていることが分かった」「民泊のように使われている」「売却しようとして初めて契約者と居住者が違うことが分かった」という場合は、

賃貸借契約書・入居者情報・同居人届・家賃入金履歴・保証会社情報・管理会社とのやり取り

を整理してください。

一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用不動産オーナーが抱える入居者・管理・サブリース・売却などの問題について、現状を整理し、正常化・保有継続・管理変更・売却などの選択肢を検討するための相談を受け付けています。

「家賃が入っているか」だけではなく、「誰と、どのような契約状態で運用しているのか」を把握する。

これが、投資用不動産を長期的に安全に運用するための重要な管理ポイントです。

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