【結論】入居状況や家賃収入の虚偽説明は、重大な売買トラブルにつながる
「入居者がいるので、購入後すぐに家賃収入が得られます」
「現在の家賃は月額10万円です」
「空室リスクが少ない物件なので安心です」
投資用マンションを購入する際、このような説明を受けたことはありませんか。
賃貸中の物件を入居者付きで購入する取引は、一般に「オーナーチェンジ」と呼ばれます。
入居者がいる物件は、購入後すぐに家賃収入を得られる可能性がある一方、実際の入居状況や賃貸借契約の内容を正確に確認することが重要です。
悪質なケースでは、販売時の説明と実際の状況が異なり、購入後に次のような問題が発覚することがあります。
- 入居中と説明された部屋が、引渡し時には空室だった
- 入居者が退去予定であることを知らされていなかった
- 説明された賃料と実際の契約賃料が異なっていた
- 家賃の入金が確認できない
- 賃貸借契約書の内容に不審な点がある
- 販売会社による一時的な賃料補填が、実際の家賃収入のように説明されていた
このような場合、販売会社や仲介会社の説明内容によっては、宅地建物取引業法上の問題や、民法上の契約取消し・損害賠償などが検討対象になる可能性があります。
ただし、購入後に空室になったという事実だけで、不動産会社の違法行為が認められるわけではありません。
重要なのは、売買契約時点の入居状況と、販売会社が何を把握し、どのように説明していたかを確認することです。
【解決事例】家賃98,000円の入居中物件を購入した会社員
物件の概要
38歳の会社員Aさんは、将来の資産形成を目的として、東京都内の投資用ワンルームマンションを購入しました。
不動産販売会社B社からは、「現在入居者がおり、安定した家賃収入が見込める」と説明されていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都内 |
| 物件種別 | 投資用ワンルームマンション |
| 築年数 | 15年 |
| 専有面積 | 25㎡ |
| 購入価格 | 2,480万円 |
| 説明された月額家賃 | 98,000円 |
| 管理費・修繕積立金 | 月額17,000円 |
| ローン返済額 | 月額89,000円 |
| 説明上の月間収支 | ▲8,000円(その他費用・税金を除く) |
Aさんは、毎月の収支が多少マイナスでも、長期的な資産形成につながると考えていました。
販売会社から提示された物件資料には、月額家賃98,000円、入居中と記載されていました。
また、賃貸借契約書の写しも提示されていました。
Aさんは、入居者がいることを前提に購入を決断しました。
問題発生|購入後、家賃が振り込まれない
物件の引渡しを受けた翌月、Aさんは家賃が振り込まれていないことに気付きました。
管理会社へ確認すると、入居者はすでに退去しており、部屋は空室になっているとの回答でした。
Aさんは驚きました。
「入居中の物件として購入したのに、なぜ空室なのか」
「退去することが決まっていたなら、契約前に説明してほしかった」
「毎月のローン返済はどうすればよいのか」
さらに確認を進めると、売買契約を締結する前に、入居者から解約の申入れがあったことを示す記録が見つかりました。
しかし、Aさんは契約前にその事実を説明されていませんでした。
問題点①|「入居中」と説明して販売することの何が問題なのか?
投資用不動産では、入居状況と家賃収入が収益性に大きく影響します。
例えば、月額家賃98,000円の物件が1年間空室だった場合、単純計算で年間117万6,000円の家賃収入が得られません。
また、空室期間中もローン返済、管理費、修繕積立金などの支払いは続きます。
そのため、購入判断に重要な影響を与える入居状況について、虚偽の説明や重要な事実の意図的な不告知があれば、法的な問題となる可能性があります。
宅地建物取引業法第47条では、取引条件など相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、一定の不実告知や故意の事実不告知を禁止しています。
ただし、具体的な違反の有無は、説明内容や不動産会社の認識などを踏まえて判断する必要があります。
問題点②|入居者が退去予定だった場合、説明義務はある?
売買契約前に入居者から解約通知が出されていた場合、その情報は購入判断に影響する重要な事情になり得ます。
特に、買主が「入居中で家賃収入が継続すること」を重視して購入する場合、退去予定の有無は収益計画に直結します。
一方、売買契約後に入居者が新たに退去を申し出た場合は、通常の賃貸経営上の空室リスクである可能性があります。
したがって、次の時点を区別することが重要です。
| 確認事項 | 重要なポイント |
|---|---|
| 入居者の解約申入れ日 | 売買契約より前か後か |
| 売買契約日 | 何を前提に契約したか |
| 引渡し日 | 実際に入居中だったか |
| 不動産会社の認識 | 退去予定を把握していたか |
| 買主への説明 | 退去予定を伝えていたか |
【解決までの流れ①】賃貸借契約と退去履歴を確認
Aさんは、売買契約書、重要事項説明書、賃貸借契約書などを整理しました。
さらに、管理会社を通じて、適切な範囲で次の情報を確認しました。
- 賃貸借契約の開始日
- 実際の契約賃料
- 解約申入れ日
- 退去日
- 家賃の入金状況
- 売買契約前に管理会社が販売会社へ伝えた情報
- 敷金や賃料の引継ぎ状況
その結果、売買契約前に入居者から解約申入れがあり、その情報が販売会社に伝達されていたことを示すメールが確認されたという設定です。
この記録が、問題解決に向けた重要な資料となりました。
【解決までの流れ②】販売会社へ説明を求める
Aさんは、販売会社B社へ書面で説明を求めました。
確認した内容は次のとおりです。
- 契約前に退去予定を把握していたか
- なぜ物件資料に「入居中」と記載していたのか
- 解約申入れを買主へ伝えなかった理由
- 空室によって生じた費用負担についてどう考えるか
- 今後どのように対応するか
この段階では、感情的に責任を追及するのではなく、事実関係を整理して回答を求めることが重要です。
また、電話でのやり取りだけでなく、メールや書面で記録を残すことが望まれます。
【解決までの流れ③】弁護士に相談し、損害と解決方法を検討
Aさんは、収集した資料を弁護士に提示し、販売会社の説明に法的な問題がないか確認を依頼しました。
検討対象となったのは、主に次の点です。
- 不実告知や重要な事実の不告知の有無
- 売買契約の取消しが認められる可能性
- 損害賠償請求の可否
- 実際に発生した損害額
- 契約を維持したまま解決する方法
なお、売買契約の取消しや損害賠償が必ず認められるわけではありません。
また、空室期間の家賃相当額が、そのまま全額賠償されるとも限りません。
損害の発生、因果関係、予見可能性、損害軽減の状況などについて個別の検討が必要です。
【解決結果】売買契約を維持し、120万円の解決金で合意
今回のケースでは、Aさんが物件を保有し続けることを希望したため、売買契約の取消しではなく、金銭的な解決を目指したと想定します。
販売会社との協議の結果、次の条件で合意したという設定です。
| 項目 | モデル解決結果 |
|---|---|
| 売買契約 | 維持 |
| 販売会社との協議期間 | 約3か月 |
| 合意解決金 | 120万円 |
| 解決金の性質 | 当事者間の紛争解決のための合意金 |
| 入居者募集 | 新たな管理会社で実施 |
| 新入居者 | 募集開始から約2か月後に決定 |
| 新しい月額家賃 | 94,000円 |
この合意は裁判所が違法行為を認定した結果ではなく、当事者間の協議による解決という設定です。
今回のポイントは、売買契約前の退去申入れを示す記録を確認し、説明内容との食い違いを具体的に示したことです。
悪質な不動産会社の虚偽説明が疑われる場合、どこへ相談すればよい?
不動産会社による不実告知などが疑われる場合、宅地建物取引業者の免許行政庁への相談が考えられます。
また、契約の取消しや損害賠償請求など、個別の法的対応については弁護士への相談が重要です。
消費生活センターも相談先の一つですが、投資用不動産の取引では、個人が契約していても事業者間取引と扱われる場合があり、適用される消費者保護規定には注意が必要です。
行政への相談と、損害賠償・契約解除の実現は別の問題であることを理解しておきましょう。
再発防止|投資用マンション購入前に確認すべき6つの項目
①賃貸借契約書の内容
契約賃料、契約期間、更新条件、特約などを確認します。
②直近の家賃入金履歴
賃貸借契約書に記載された家賃と、実際の入金状況が一致しているか確認します。
③入居者の退去予定
解約通知が出されていないか、売主・管理会社へ確認します。
④レントロールの正確性
レントロールとは、物件ごとの入居状況や賃料、契約条件などをまとめた賃貸収入一覧表です。
記載内容と賃貸借契約書等の整合性を確認しましょう。
⑤販売会社の説明を記録する
家賃収入や入居状況に関する説明は、可能な限りメールや書面で残します。
⑥空室になった場合の収支を計算する
現在入居中でも、将来の退去は避けられません。
空室期間が3か月、6か月続いた場合の資金負担も確認しておきましょう。
要点整理
投資用マンションの入居状況の虚偽説明とは?
投資用マンションの入居状況の虚偽説明とは、実際の入居状況や退去予定などについて、購入希望者に事実と異なる説明をすることです。
購入判断に重要な影響を及ぼす事項について、不動産会社が故意に虚偽の説明をしたり、重要な事実を告げなかったりした場合、宅地建物取引業法第47条等の問題が生じる可能性があります。
ただし、購入後に入居者が退去したというだけで違法になるわけではありません。
購入後に虚偽説明が疑われた場合の対応
- 売買契約書・重要事項説明書を確認する
- 賃貸借契約書とレントロールを比較する
- 解約申入れ日と退去日を確認する
- 販売会社の説明記録を保存する
- 販売会社へ書面で説明を求める
- 実際の損害を整理する
- 必要に応じて免許行政庁や弁護士へ相談する
- 契約維持・取消し・損害賠償などの選択肢を検討する
FAQ|悪質な不動産会社と家賃収入の虚偽説明
Q1.入居中と聞いて購入した物件が空室だった場合、契約を取り消せますか?
必ず取り消せるわけではありません。販売会社が何を説明したか、退去予定を把握していたか、その説明が購入判断にどう影響したかなどによって判断が異なります。
Q2.販売会社が家賃収入について嘘をついていた場合、宅建業法違反になりますか?
購入判断に重要な影響を及ぼす賃料や取引条件について、故意に不実のことを告げた場合などは、宅地建物取引業法第47条違反となる可能性があります。
Q3.レントロールと実際の家賃が違う場合、損害賠償請求できますか?
差異があるという事実だけで、当然に請求できるわけではありません。説明の経緯、契約内容、損害の発生と因果関係などを確認する必要があります。
Q4.不動産会社から賃貸借契約書の原本を見せてもらえない場合は?
契約書の写し、必要な賃貸条件の資料、入金履歴など、適切な範囲で確認できる資料の提示を求めましょう。個人情報の取扱いには配慮が必要です。
Q5.悪質な不動産会社はどこへ通報できますか?
宅地建物取引業法違反が疑われる場合は、免許行政庁への相談が考えられます。契約の取消しや損害賠償については、弁護士等へ相談しましょう。
悪質な不動産会社とのトラブルでお困りの方へ
「入居中と説明されたのに、購入後すぐ空室になった」
「説明されていた家賃と実際の家賃が違う」
「不動産会社が重要な情報を隠していたのではないか」
「購入時の説明と実際の契約内容が違う」
「悪質な不動産会社から購入してしまい、どうすればよいか分からない」
このようなお悩みを抱えていませんか。
投資用不動産の購入トラブルでは、売買契約時の説明内容、実際の賃貸状況、家賃収入、契約書類などを整理することが重要です。
また、契約上の問題がある場合でも、契約を維持して保有するのか、売却するのか、法的対応を検討するのかによって、取るべき対応は異なります。
一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用マンションの購入・売却・賃貸管理に関するトラブルについて、ご相談を受け付けています。
当協会は非営利の一般社団法人として、投資用不動産オーナーが抱える問題を整理し、解決に向けた選択肢を検討するお手伝いをしています。
ご相談の際には、売買契約書、重要事項説明書、物件販売資料、レントロール、賃貸借契約書、販売会社とのメールなどが参考になります。
契約の取消しや損害賠償請求など、法律上の判断・代理交渉が必要な場合は、弁護士等の専門家への相談が必要です。
「購入時の説明が本当だったのか確認したい」「販売会社の対応に納得できない」「保有を続けるべきか売却すべきか迷っている」
そのような方は、まず現在の状況を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
悪質な不動産会社とのトラブル、投資用マンションの購入後の問題、売却相談は、一般社団法人 不動産トラブル解決協会へお問い合わせください。
公式サイト:https://trouble-kaiketu.com/
参考法令・公的資料
1.宅地建物取引業法 第47条・第47条の2
不実告知、故意の事実不告知、不確実な利益についての断定的判断の提供等に関する規定。
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
2.国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください」
投資用マンションの悪質な勧誘に関する注意喚起。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000028.html
3.国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」
投資用マンションの勧誘トラブル、説明不足、ローン申告に関する問題などを紹介。
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190328_1.html
4.東京都住宅政策本部「最近の不動産相談事例」
売買契約や不動産取引に関する相談事例を掲載。
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/fudosan/torihiki/301jirei

