投資用ワンルームマンションの勧誘で、
「興味ありません」
「購入しません」
「もう電話しないでください」
とはっきり伝えたにもかかわらず、翌日も、その翌週も営業電話が来る。
担当者を着信拒否すると、別の番号から電話が来る。
さらには勤務先にまで連絡される。
このようなケースでは、単に「営業が熱心」というだけで済まない可能性があります。
東京都は、宅建業者が契約締結の勧誘をする際、相手が契約を締結しない意思や、勧誘を引き続き受けることを希望しない意思を示したにもかかわらず勧誘を継続する行為を、宅建業法47条の2第3項に基づく規制対象として案内しています。また、迷惑を覚えさせるような時間の電話・訪問による勧誘も規制されています。
【結論】断った後の勧誘は「記録を残す」が第一歩
しつこい投資用マンション勧誘を受けた場合、感情的に営業担当者と争うより、まず次の情報を残すことが重要です。
- 会社名・担当者名・電話番号
- 電話があった日時と回数
- 「購入しない」「今後勧誘を受けたくない」と伝えた日時
- 断った後にも電話された日時
- 勤務先へ電話された記録
- SMS・LINE・メール
- 面談時間や営業担当者との具体的な会話
- 宅建業者の免許番号
国土交通省 関東地方整備局も、断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくるなどのケースについて、日時、会社名、担当者名、具体的なやり取りなどを記録し、免許行政庁へ知らせるよう案内しています。
【解決事例】「一度だけ話を聞いてください」から始まったワンルームマンション勧誘
32歳の会社員Aさんの携帯電話に、知らない番号から電話がありました。
営業担当者は、
「老後の年金対策についてお話があります」
「会社員だからこそできる資産形成です」
と説明。
紹介されたのは東京都内の中古ワンルームマンションでした。
Aさんは不動産投資に興味がなかったため、
「購入するつもりはありません」
と伝えました。
ところが担当者は、
「買うかどうかは話を聞いてから決めれば大丈夫です」
「30分だけです」
と面談を勧めます。
Aさんは断り続けることが面倒になり、喫茶店で一度だけ説明を聞くことにしました。
問題は「面談後」に始まった
営業担当者との面談は30分では終わりませんでした。
説明は、
約3時間。
Aさんが、
「今日は契約しません」
と伝えても、
「何が不安なんですか?」
「皆さん最初はそう言います」
「この条件は今日だから出せます」
などと説明が続きました。
最終的にAさんは契約せず帰宅しました。
しかし翌日。
営業担当者から再び電話が来ました。
Aさんは、
「購入しません。今後電話もしないでください」
と明確に伝えました。
それでも数日後、別の番号から電話。
さらに翌週には、
勤務先にも電話が入りました。
ここでAさんは「単なる営業ではないのでは」と考え、相談先を調べ始めました。
【問題点①】「断った後の再勧誘」は宅建業法上どう考える?
投資用不動産オーナーだけでなく、これから不動産を購入する人にも知っておいてほしい専門用語があります。
再勧誘とは?
簡単にいえば、
「もう勧誘を受けたくない」と意思表示した相手に、さらに契約を勧めること
です。
東京都の案内では、
相手方が契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為
が宅建業法47条の2第3項に基づく禁止行為として示されています。
したがって、
「検討します」
「今忙しいです」
よりも、
「購入しません」
「今後の勧誘を希望しません」
と意思を明確にすることが重要です。
【問題点②】長時間の勧誘なら何時間から違反?
ここは誤解しやすいところです。
「2時間を超えたら自動的に違法」
という単純な基準で判断するものではありません。
関東地方整備局は、宅建業法上、電話による長時間の勧誘その他、私生活または業務の平穏を害するような方法によって相手を困惑させる行為が禁止されていると案内しています。
したがって重要なのは、
「何時間だったか」
だけではなく、
「帰りたいと言ったか」
「契約しないと言ったか」
「それでも勧誘されたか」
「仕事や生活に支障が出たか」
などの具体的状況です。
【問題点③】会社名を言わずに勧誘する営業にも注意
突然、
「年金についてアンケートです」
「資産形成に興味ありませんか?」
などと言われ、話を聞いているうちに投資用マンションの営業だったと分かるケースがあります。
東京都は、勧誘に先立って、
宅建業者の商号・名称
勧誘する者の氏名
勧誘目的であること
を告げずに勧誘する行為についても、宅建業法に基づく規制対象として案内しています。
営業電話を受けたら、
「会社名をお願いします」
「お名前をお願いします」
「何の目的の電話ですか?」
と最初に確認することが重要です。
【解決までの流れ①】着信履歴を消さず時系列表を作成
Aさんは最初、
営業担当者からの着信履歴をすべて削除しようとしていました。
しかし、相談に備えて保存することにしました。
そしてメモを作りました。
9月3日 19:20 最初の電話
9月5日 18:30 面談開始
同日 21:35 面談終了
9月6日 12:10 電話。「購入しない、今後勧誘不要」と回答
9月9日 19:40 別番号から着信
9月11日 15:20 勤務先へ電話
このようにすると、
「しつこかった」
という感想ではなく、
何がいつ起きたのか
を第三者へ説明できます。
【解決までの流れ②】宅建業者の免許を確認
ここで覚えておきたいのが、
宅建業免許
です。
宅地建物取引業を営むには免許が必要です。
事務所を二つ以上の都道府県に置く場合などは国土交通大臣免許、それ以外では都道府県知事免許となる仕組みがあります。
例えば、
東京都知事(○)第○○○○○号
などです。
免許番号を確認すると、
どの行政庁がその宅建業者を監督しているのか
を判断する材料になります。
【解決までの流れ③】「もう電話しないでください」を明確に伝える
Aさんは次の電話で、
「物件を購入する意思はありません。今後の勧誘も希望しません」
と明確に伝えました。
そして、
日時、
相手、
内容
を記録しました。
ここが重要です。
「今は忙しい」
「また考えます」
では、勧誘拒否の意思が曖昧になることがあります。
今後勧誘を受けたくないのであれば、
「購入しません」
「今後の勧誘を希望しません」
と明確に伝えます。
【解決までの流れ④】投資用不動産の相談窓口へ
それでも電話が続いたため、Aさんは行政の相談窓口へ相談することにしました。
東京都では2025年4月7日から、住宅政策本部民間住宅部不動産業課に投資用不動産特別相談窓口を設置しています。
投資用不動産のトラブル相談を受け付け、法律的見解が必要な場合には不動産取引に詳しい弁護士の無料相談を紹介し、宅建業法違反の疑いがある長時間の迷惑勧誘等については調査のうえ宅建業者への指導・監督を行うとしています。
東京都以外でも、業者の免許行政庁となる都道府県や地方整備局等が相談先となる場合があります。
【解決結果】記録を整理し相談、その後の勧誘が止まった
Aさんは、
着信履歴、
勤務先への電話日時、
担当者名、
会社名、
面談時間、
「購入しない」と伝えた日時
を整理して相談しました。
その後、業者にも改めて勧誘を希望しない旨を明確に伝え、モデルケースでは継続していた勧誘は止まりました。
この事例で重要なのは、
「しつこい営業マンと口論して勝った」
ことではありません。
事実を記録し、宅建業法上どこが問題となり得るかを整理して、適切な相談先へつないだこと
です。
投資用不動産の知識|「宅建業者」と「宅建士」は違う
不動産投資をするなら覚えておきたい用語です。
宅建業者とは、宅地・建物の売買や媒介などを業として行うため、宅建業法に基づく免許を受けた事業者です。
一方、
宅地建物取引士(宅建士)
は、重要事項説明など一定の業務を担う資格者です。
つまり、
会社=宅建業者
資格者=宅建士
と整理すると分かりやすくなります。
トラブル相談では、
「担当者が宅建士だったか」
だけでなく、
「どの宅建業者との取引・勧誘なのか」
を確認することが重要です。
投資用不動産の知識|「表面利回り」だけを信用しない
東京都は過去の投資用マンション相談例として、家賃収入について表面利回りを強調し、実質利回りの説明が十分でないケースも紹介しています。
例えば、
物件価格2,500万円、
家賃月10万円なら、
年間家賃120万円。
表面利回りは、
120万円 ÷ 2,500万円 × 100=4.8%
です。
しかし実際には、
管理費、
修繕積立金、
賃貸管理費、
固定資産税等、
空室、
原状回復、
設備交換
などがあります。
そのため、
「利回り4.8%だから毎年120万円儲かる」
という意味ではありません。
投資用マンションでは、
表面利回りではなく、実際に残るキャッシュフローを見る
ことが重要です。
投資用マンションの勧誘を断ったのに電話が続いたら?
宅建業者による投資用マンション勧誘では、契約しない意思や今後勧誘を受けたくない意思を示した後も勧誘を継続する行為は、宅建業法上問題となる可能性があります。
対応の基本は、
会社名確認 → 担当者確認 → 勧誘拒否を明示 → 日時・内容を記録 → 免許番号確認 → 免許行政庁等へ相談
です。
特に重要なのは、
- 「購入しません」と明確に伝える
- 「今後の勧誘も希望しません」と伝える
- 着信履歴を消さない
- SMS・メール・LINEを保存する
- 長時間面談なら開始・終了時刻を記録する
- 勤務先への電話も記録する
- 会社名・担当者・免許番号を確認する
- 感情的な口論ではなく時系列で事実を整理する
ことです。
「断ること」と「断った証拠を残すこと」をセットで考えるのがポイントです。
再発防止|ワンルームマンションの営業を受けたら「その場で決めない」
しつこい勧誘をきっかけに物件を知ったとしても、
勧誘方法の問題
と、
物件自体の投資価値
は分けて考える必要があります。
本当に投資を検討するなら、
現在家賃、
周辺家賃相場、
管理費、
修繕積立金、
ローン金利、
固定資産税等、
空室リスク、
将来の修繕費、
現在の中古売買相場
を自分でも確認します。
そして営業担当者から、
「今日だけです」
「今決めないとなくなります」
と言われても、
その場で契約するのではなく、数字を持ち帰って検証する
ことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1.「もう電話しないで」と言ったのに電話が来ました。宅建業法違反ですか?
契約しない意思や今後勧誘を受けたくない意思を明確に示した後も宅建業者が勧誘を継続する行為は、宅建業法上の禁止行為に該当する可能性があります。ただし、実際の違反認定は具体的な事実関係に基づいて行政庁等が判断します。
Q2.夜の電話営業は禁止されていますか?
「○時以降なら必ず違反」と一律に判断するのではなく、迷惑を覚えさせるような時間帯の電話・訪問による勧誘が規制されています。具体的な状況を記録しておくことが重要です。
Q3.3時間の営業を受けました。長時間勧誘になりますか?
時間だけで自動的に判断されるものではありません。帰りたい、契約しないなどの意思を示した後も勧誘が続いたか、生活や業務の平穏を害する方法だったかなど、具体的事情が重要になります。
Q4.勤務先へ電話された場合も記録した方がいいですか?
はい。日時、電話番号、対応した人、担当者名、具体的な内容を可能な範囲で記録してください。行政相談の際、勧誘状況を説明する資料になります。
Q5.どこへ相談すればいいですか?
まず業者の宅建業免許を確認し、免許行政庁となる都道府県または地方整備局等を確認します。東京都では投資用不動産特別相談窓口も設置されています。
しつこい勧誘をきっかけに購入してしまったオーナーへ
今回のケースより一段深刻なのが、
断り切れず、実際にワンルームマンションを購入してしまった場合
です。
その場合は、勧誘電話だけを問題にするのではなく、
購入時に何を説明されたのか
長時間・再勧誘などがなかったか
重要事項説明はどうだったか
収支シミュレーションと実績はどう違うか
現在のローン残高はいくらか
現在いくらで売却できるのか
まで整理する必要があります。
一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用ワンルームマンションについて、購入時の経緯・契約書類・現在収支・ローン残高・賃貸状況・査定価格などを整理し、問題点と今後の選択肢を検討するための相談を受け付けています。
特に、
「断ったのに何度も営業された」
「長時間勧誘されて断り切れなかった」
「勤務先まで電話された」
「今日契約しないと損すると急かされた」
という場合は、
着信履歴、LINE、SMS、メール、営業資料、売買契約書、重要事項説明書、収支シミュレーションなどを削除・廃棄せず保管してください。
投資用不動産トラブルでは、
「営業がしつこかった」という感覚を、「いつ・誰が・何をした」という事実へ変えること。
それが、問題を整理して適切な相談先へつなげる第一歩です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。行政機関が公開している投資用マンションの相談事例・注意喚起等を参考に、個人・企業・物件を特定できないモデルケースへ再構成しています。特定の事業者について宅建業法違反があったと認定・示唆するものではありません。実際の宅建業法違反の有無、契約の取消し・解除、損害賠償等については具体的な事実・契約・証拠によって判断が異なります。必要に応じて免許行政庁や弁護士等へご相談ください。
参考となる公的情報: 東京都「投資用マンション等についての悪質な勧誘電話等にご注意ください」 / 関東地方整備局「宅地建物取引業者からの悪質な勧誘電話等にご注意ください」 / 東京都「最近の不動産相談事例」

