「節税になる」と言われて投資用マンションを購入したのに、なぜ毎月赤字になる?

投資用マンションの相談で注意したいのが、購入前に聞いていた説明と、実際の収支が大きく違うケースです。

「節税になります」

「家賃収入でローンを返済できます」

「将来は年金代わりになります」

「ほとんど自己負担はありません」

こうした説明を受けて購入したものの、数年後には毎月1万円、2万円、場合によってはそれ以上の持ち出しが発生しているケースがあります。

結論からいうと、このような場合に最初にすべきなのは、「騙された」「すぐ売ろう」と結論を出すことではなく、①購入時の説明資料、②実際の収支、③現在のローン残高、④現在の売却価格、⑤今後の保有コストを並べて、説明と現実の差がどこから生じているのかを確認することです。

消費者庁は、事業者と消費者との間には情報の質・量や交渉力に格差があることを踏まえ、消費者契約法が不当な勧誘による契約の取消しや不当な契約条項の無効などを規定していると説明しています。ただし、個々の不動産投資契約で取消し等が認められるかは、契約内容・勧誘経緯・証拠などによって異なります。

目次

【解決事例】「月5,000円程度の負担」と説明されたのに実際は月2万円超の赤字

会社員のAさんは、営業担当者から資産形成の提案を受け、東京都内のワンルームマンションを購入しました。

購入前の説明では、

「家賃収入があるため、実質的な自己負担は月数千円程度」

という内容でした。

さらに、

「税金の負担も軽減できる可能性があります」

「ローン完済後は家賃収入が老後の収入になります」

という説明もあり、Aさんは長期保有を前提に購入しました。

ところが数年後。

ローン返済に加えて、管理費、修繕積立金、賃貸管理費、固定資産税、設備交換などを計算すると、実際の持ち出しは平均すると月2万円を超える状態になっていました。

しかも修繕積立金の値上げ通知まで届きます。

Aさんは、

「購入時に聞いていた話と全然違う。契約をなかったことにできないのか?」

と考えるようになりました。

しかし、まず行ったのは契約解除の検討ではありません。

購入時の説明と現在の数字を再現することでした。


なぜ「購入時シミュレーション」と実際の収支が違ってくるのか?

投資用不動産の収支は、家賃とローン返済だけでは決まりません。

実際には、管理費、修繕積立金、賃貸管理費、固定資産税等、保険料、設備交換費用、空室期間、原状回復費用など、さまざまな支出が発生します。

さらに長期保有では、

家賃が下がる可能性
修繕積立金が上がる可能性
設備交換が必要になる可能性
金利が変動する可能性

なども考慮する必要があります。

そのため、購入時のシミュレーションを見るときは、

「初年度にいくら持ち出すか」ではなく、「10年後・20年後までどの前提条件で計算されているか」

を見ることが重要です。


「節税になる」は本当にメリットなのか?

ここは特に誤解されやすいポイントです。

不動産所得の計算や給与所得等との関係によって、税負担に影響が生じる場合はあります。

しかし、

「税金が減ること」と「投資そのものが利益を生んでいること」は別問題です。

例えば、年間20万円のキャッシュアウトが発生しているのに、

「税金が10万円減ったから得をした」

と単純に考えることはできません。

さらに税務上の扱いは、所得状況、減価償却、建物・土地の取得価額、借入条件、売却時期などによって変わります。

したがって、「節税できるから買う」という一点だけで投資判断を行うことは避け、税引後のキャッシュフローと資産価値を含めて判断する必要があります。

具体的な税務判断は税理士等への確認が必要です。


【解決までの流れ①】購入時の資料を全部集める

Aさんが最初に行ったのは、購入当時の資料を探すことでした。

確認したのは、

売買契約書/重要事項説明書/ローン関係資料/収支シミュレーション/パンフレット/営業担当者とのメール・メッセージ/当時渡された提案資料

です。

特に重要だったのが収支シミュレーションでした。

そこに記載されている、

家賃、管理費、修繕積立金、ローン返済額、金利、空室率、将来家賃、設備交換費用などを確認しました。

すると、現在の実績値との差が見えてきました。


【解決までの流れ②】「説明と違う」を数字にする

「話が違う」という感覚だけでは問題点を特定できません。

そこで、

購入時予測 → 現在実績 → 差額

という形で比較しました。

例えば、

購入時想定の年間持ち出し 6万円
実際の年間持ち出し    24万円

なら、

年間18万円の差

です。

その差が、

修繕積立金なのか、管理費なのか、金利なのか、家賃なのか、固定資産税等なのかを分解します。

こうすることで、

「販売時の前提そのものに問題があった可能性」

と、

「購入後に状況が変化した部分」

を分けて検討しやすくなります。


【解決までの流れ③】「過去の損失」と「これからの判断」を分ける

Aさんが最も悩んでいたのは、

「今までこれだけ払ってきたのだから、今売ったら損だ」

という点でした。

しかし投資判断では、過去に支払った金額だけで今後を決めると判断を誤る可能性があります。

重要なのは、

今日から先、この物件を所有し続ける合理性があるか

です。

そこで、

現在売却した場合

と、

5年間保有した場合

と、

10年間保有した場合

を比較しました。


【解決までの流れ④】現在の売却価格とローン残高を確認

次に現在の資産状況を整理しました。

確認するのは、

現在のローン残高

と、

現在の現実的な売却価格

です。

ここで重要なのは、

「購入価格3,000万円だから、今も3,000万円の価値があるはず」

と考えないことです。

不動産価格は、立地、築年数、賃料、管理費・修繕積立金、管理状態、市況、賃貸借条件などによって変化します。

複数の査定根拠を確認し、売却諸費用も考慮したうえで、

現在売った場合の手残り、または不足額

を計算します。


【解決までの流れ⑤】保有・売却・収支改善を比較

Aさんの場合、

①現状のまま保有

②管理・収支を見直して保有

③売却

という複数の選択肢を比較しました。

その結果、

「節税になるかどうか」

ではなく、

今後のキャッシュフローと売却価格を基準に判断する

という考え方に切り替えることができました。

この事例の重要なポイントは、

「購入したことが正しかったか」を延々と考えるのではなく、「今日から何をすれば損失拡大を防げるか」に判断軸を変えたことです。


販売時の説明に疑問がある場合はどうする?

購入時に、

「絶対に儲かる」

「必ず節税になる」

「将来必ず値上がりする」

などと説明されていた場合は、当時の資料・メール・メッセージ等を保管しておくことが重要です。

宅地建物取引業については、国土交通省の地方整備局等が免許・指導監督を担っており、関東地方整備局では宅地建物取引業法違反に関する通報や監督処分等の情報も案内しています。

一方、契約取消しや損害賠償等が可能かどうかは、具体的な勧誘内容、契約者の属性、契約経緯、証拠などによって異なります。

「説明と違う=必ず契約を取り消せる」というものではありません。

法的対応を検討する場合は、資料を整理したうえで弁護士等へ確認することが重要です。

国土交通省 関東地方整備局「不動産業等」


「節税になる」と言われた投資用マンションが赤字になったら?

投資用マンションを「節税になる」と説明されて購入したものの赤字になった場合は、税金だけでなく物件全体のキャッシュフローを再計算することが重要です。

確認する順番は、

購入時資料 → 購入時シミュレーション → 現在の実績収支 → ローン残高 → 現在の売却価格 → 5年・10年保有シミュレーション

です。

特に重要なのは、次の3点です。

  • 節税額と投資利益を混同しない
  • 購入時の予測と現在の実績を数字で比較する
  • 過去の支出ではなく、今後の保有・売却を比較する

販売時の説明そのものに疑問がある場合は、契約書だけでなく提案資料・メール・メッセージ・収支表等を保存することが重要です。

消費者庁も、投資などについて、仕組みや目的を十分理解・納得してから契約することや、内容が理解できない場合には安易に契約しないことを注意喚起しています。

消費者庁「資産の運用・処分は取引の仕組みや目的がきちんと納得できてから!」


再発防止策|購入前に「節税後」ではなく「現金収支」を見る

投資用マンション購入前には、営業担当者から提示された収支表だけでなく、自分でも次の数字を確認することが重要です。

家賃が10%下がった場合/金利が1%上昇した場合/修繕積立金が増額された場合/1〜2か月空室になった場合/設備交換が発生した場合

こうした条件でも家計として保有できるかを確認します。

つまり、

「予定通りなら儲かるか」ではなく、「予定通りにいかなくても耐えられるか」

を見ることが、不動産投資のリスク管理では重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1.「節税になる」と言われて購入したのに税金がほとんど減りません。問題がありますか?
税効果は所得状況や物件条件等によって異なります。まず購入時にどのような前提で試算されていたかを確認し、具体的な税務については税理士へ確認してください。

Q2.購入時の収支シミュレーションと実際の収支が違えば契約を取り消せますか?
数字が違うだけで直ちに取消しが認められるとは限りません。説明内容、契約書、資料、勧誘経緯等によって判断が異なるため、法的判断が必要な場合は弁護士等へ相談してください。

Q3.毎月2万円の赤字なら売却した方がいいですか?
月額だけでは判断できません。ローン元金の減少、現在の売却価格、将来の家賃・修繕費等を含めて保有と売却を比較します。

Q4.販売会社とのLINEやメールは残しておいた方がいいですか?
はい。購入時にどのような説明を受けたか確認する資料になる可能性があります。契約書、重要事項説明書、パンフレット、収支表等と合わせて保管しておくとよいでしょう。

Q5.赤字でも節税できていれば持ち続けた方が得ですか?
一概には言えません。税効果だけでなく、実際の現金収支、ローン残高、物件価値、将来費用まで含めて判断する必要があります。



「購入時に聞いていた話と違う」と感じているオーナーへ

投資用マンションの収支トラブルでは、「毎月赤字だから失敗」「節税できたから成功」という単純な判断はできません。

まず、

購入時の収支シミュレーション・現在の年間収支・ローン残高・現在の売却価格

を並べてください。

そのうえで、

「購入時にどのような説明を受けたか」

と、

「現在どの選択肢が最も合理的か」

を分けて考えることが重要です。

「節税になると言われて購入した」「月数千円の負担と聞いていたのに赤字が大きい」「修繕積立金や金利まで上がっている」「購入時の収支表と現状が違う」「売却したいがローン残高が心配」という場合は、契約資料と現在の収支を整理することで、問題の原因と出口が見えやすくなります。

一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用不動産オーナーが抱える問題を整理し、保有・収支改善・売却などの選択肢を検討するための相談を受け付けています。購入時の資料や現在のローン残高、収支資料がある場合は、それらを揃えたうえでご相談いただくと状況を整理しやすくなります。

※本記事は2026年9月7日時点で確認した国土交通省・消費者庁の公表情報を参考にした一般的な情報提供です。契約取消し、損害賠償、税務上の取扱い等は個別事情によって判断が異なります。具体的な法律・税務判断が必要な場合は、弁護士・税理士等の適切な専門家へご相談ください。

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