相続した投資用マンションを兄弟で共有|売却に反対されて売れない場合の解決事例


相続した投資用マンションは、兄弟の一人が反対すると売却できない?

父親が所有していた投資用ワンルームマンション。

相続した兄弟の一人は、

「今のうちに売却したい」

と考えています。

一方、もう一人は、

「毎月家賃が入ってくるのだから、売る必要はない」

と反対。

話し合いがまとまらず、売却できない状態が続いています。

このような場合、どうすればよいのでしょうか。

結論から言うと、共有名義のマンション全体を通常の売買で第三者に売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

しかし、売却に反対する共有者がいるからといって、解決方法がなくなるわけではありません。

主な選択肢は次の4つです。

  1. 共有者全員で合意し、マンション全体を売却する
  2. 一方の共有者が、もう一方の共有持分を買い取る
  3. 自分の共有持分だけを第三者へ売却する
  4. 協議がまとまらない場合、共有物分割請求を検討する

重要なのは、「マンション全体を売ること」と「自分の共有持分を処分すること」は別の問題だという点です。


【解決事例】兄は売却希望、弟は賃貸経営の継続を希望

目次

父親から投資用ワンルームマンションを相続

42歳の会社員Aさんは、父親が亡くなったことをきっかけに、東京都内の投資用ワンルームマンションを相続しました。

物件の概要は次のとおりです。

項目内容
所在地東京都内
間取り1K
専有面積約25㎡
築年数18年
月額家賃92,000円
年間家賃収入1,104,000円
ローン残高なし
所有者兄Aさん・弟Bさん
共有持分各2分の1

父親の相続については遺産分割協議が成立し、兄弟がそれぞれ2分の1の持分を取得することになりました。

相続登記も完了しています。

そのため、今回のケースは遺産分割前の状態ではなく、遺産分割後に兄弟が共有者となった状態です。

この区別は、後で説明する解決手続を考えるうえで重要です。


問題発生|兄は「売りたい」、弟は「売りたくない」

相続から約2年後。

Aさんは子どもの教育費などを考え、マンションの売却を希望するようになりました。

Aさんは弟のBさんに、

「今のうちに売却して、現金で半分ずつ分けないか」

と提案します。

しかしBさんは反対しました。

理由は、

「せっかく家賃が入っているのに、売るのはもったいない」

というものでした。

毎月92,000円の家賃収入があり、ローンもありません。

Bさんは、

「このまま持っていれば老後の収入になる」

と考えていました。

一方、Aさんは、

「今後、大規模修繕や設備交換が必要になるかもしれない」

「現金が必要なときに売れないのは困る」

と考えています。

両者の意見は平行線でした。


問題点①|共有持分が2分の1でも、マンション全体を勝手に売ることはできない

Aさんは当初、

「自分も半分の所有者なのだから、売却を進められるのでは?」

と考えていました。

しかし、共有不動産には法律上のルールがあります。

民法では、共有物について、行為の内容に応じて必要な同意の範囲が異なります。

一般に、

  • 共有物全体の処分:共有者全員の同意が必要
  • 通常の管理行為:持分の価格の過半数で決定
  • 保存行為:各共有者が単独で行える

という区別があります。

管理行為や変更行為には例外・個別の判断もありますが、マンション全体を第三者に売却する場合は、共有者全員の同意が基本です。

今回のように兄弟が2分の1ずつ所有している場合、Aさんだけの判断でマンション全体を売却することはできません。


「共有持分」とは?

共有持分とは、一つの不動産を複数人で所有している場合に、それぞれの共有者が持つ所有権の割合です。

例えば、2,400万円のマンションを兄弟で2分の1ずつ所有している場合、

兄:持分2分の1

弟:持分2分の1

となります。

ただし、持分2分の1だからといって、部屋の右半分が兄、左半分が弟の所有になるわけではありません。

マンション全体について、それぞれが割合に応じた権利を持っている状態です。


問題点②|家賃収入があるからこそ意見が対立する

今回のトラブルは、空き家の相続とは少し異なります。

投資用マンションには、毎月の家賃収入があります。

そのため、

売却して現金化したい人と、

家賃収入を継続して受け取りたい人

で意見が分かれやすくなります。

今回のマンションの年間家賃収入は、

92,000円×12か月=1,104,000円。

仮に管理費・修繕積立金・賃貸管理費・固定資産税等の年間支出が合計30万円であれば、

年間の概算収支は804,000円。

兄弟それぞれの持分を2分の1として単純計算すると、

一人当たり年間402,000円。

※この金額は空室損失、臨時修繕、所得税等を考慮しない説明用の概算です。

Bさんからすれば、

「毎年約40万円の収入を手放したくない」

という考えです。

一方、Aさんからすれば、

「今後の修繕費や空室リスクを考えると、売却して現金化したい」

という考えになります。

どちらか一方が必ず間違っているわけではありません。

問題は、共有者同士で投資方針が一致していないことです。


【解決までの流れ①】まずマンションの市場価格を確認

Aさんは当初、

「2,500万円くらいで売れるだろう」

と考えていました。

しかし、感覚だけでは話し合いが進みません。

そこで、複数の不動産会社へ査定を依頼しました。

査定結果は、

A社:2,280万円

B社:2,400万円

C社:2,460万円

でした。

この結果から、今回のケースでは2,400万円を協議上の基準価格とすることを兄弟で検討しました。

ただし、査定額は売却を保証する金額ではありません。

また、共有持分の買取価格が必ず「物件全体の査定額×持分割合」になるわけでもありません。

価格は、物件の状況、権利関係、税金、費用負担、当事者間の合意などを踏まえて検討する必要があります。


【解決までの流れ②】「全部売る」以外の選択肢を提示

AさんはBさんに、次のような提案をしました。

「売却したくないなら、僕の持分を買い取ってくれないか」

Bさんは、マンションを手放したくありません。

一方、Aさんは現金化したいと考えています。

そこで、

弟が兄の共有持分を買い取る

という方法を検討することになりました。

この方法であれば、

Aさんは持分を現金化できます。

Bさんはマンションの単独所有者となり、賃貸経営を継続できます。

双方の希望を一定程度満たせる可能性があります。


「共有持分の買取」とは?

共有持分の買取とは、共有者の一人が、ほかの共有者の持分を取得し、その対価として金銭を支払うことです。

例えば、マンション全体の協議上の評価額が2,400万円で、兄弟が各2分の1を所有している場合、

2,400万円×2分の1=1,200万円

が、持分価格を検討する際の一つの出発点になります。

ただし、実際の金額は当事者間の合意や適正評価によって決める必要があります。

また、持分を取得する側には資金が必要です。

融資を利用する場合も、必ず借りられるとは限りません。


【解決までの流れ③】持分の買取価格を協議

AさんとBさんは、査定資料を確認しながら話し合いました。

Aさんは、

「市場価格が2,400万円なら、自分の持分は1,200万円程度だと思う」

と説明しました。

Bさんは当初、

「現金で1,200万円を払うのは負担が大きい」

と難色を示しました。

しかし、Bさんにとっても、共有状態を続けることには問題があります。

今後、兄弟のどちらかが亡くなれば、さらに相続が発生する可能性があります。

また、修繕や売却などの判断で、再び意見が対立する可能性もあります。

そこでBさんは資金計画を見直し、持分買取を具体的に検討しました。


【解決までの流れ④】売却費用・税金・名義変更を確認

共有持分の売買では、単に代金を支払えば終わりではありません。

確認が必要なのは、

売買契約の内容、

登記手続、

登記費用、

税金、

既存の賃貸借契約、

敷金等の取扱い、

管理会社との契約

などです。

特に、持分を売却する側では、譲渡所得に対する課税が問題になる可能性があります。

また、相続した不動産の取得費や取得時期は、原則として被相続人の取得時の情報を引き継いで計算するため、相続時の評価額がそのまま譲渡所得計算上の取得費になるわけではありません。

税額は購入時資料、減価償却、売却費用等によって変わるため、税理士等への確認が必要です。


【解決結果】弟が兄の持分を買い取り、共有状態を解消

今回のケースでは、協議の結果、

マンション全体の評価額を2,400万円

とすることで合意しました。

Aさんの持分は2分の1。

そのため、

持分買取代金は1,200万円。

Bさんは必要な資金を確保し、Aさんの持分を買い取ることになりました。

売買契約と必要な登記手続を行い、Bさんがマンションの単独所有者となりました。

Aさんは、希望していた現金化を実現。

Bさんは、入居者を退去させることなく賃貸経営を継続できました。

モデルケースでは、査定開始から合意・手続完了まで約4か月を想定しています。

共有物分割訴訟に進む前に、持分買取による解決が成立したケースです。

※期間・金額・合意内容は説明用の架空設定であり、一般的な解決期間や買取条件を示すものではありません。


共有者が絶対に売却へ応じない場合はどうする?

今回のように、共有者同士で合意できれば比較的整理しやすいケースもあります。

しかし、

「絶対に売らない」

「持分も買い取らない」

「話し合いにも応じない」

という場合はどうでしょうか。

その場合に検討される制度の一つが、

共有物分割請求

です。


共有物分割請求とは?

共有物分割請求とは、共有者が、共有状態を解消するために分割を求めることができる制度です。

民法256条では、原則として各共有者が共有物の分割を請求できることが定められています。

協議がまとまらない場合には、民法258条に基づく裁判上の共有物分割が問題となることがあります。

裁判上の分割方法には、主に次のようなものがあります。

①現物分割

不動産そのものを分ける方法です。

ただし、ワンルームマンション1室を物理的に分けることは通常困難です。

②価格賠償による分割

一方の共有者が不動産を取得し、他方へ金銭を支払う方法です。

適正な価格評価や取得する側の支払能力などが問題になります。

③競売による分割

一定の場合に、裁判所が競売を命じ、売却代金を分配する方法です。

ただし、競売になれば必ず希望価格で売れるわけではありません。

共有物分割請求は、必ず希望どおりの価格で現金化できる制度ではないことに注意が必要です。


公開裁判例から分かること|収益不動産でも「共有関係の解消」が問題になる

不動産関係団体が公開している法律相談では、兄弟間で共有する収益不動産について、一方が共有関係の解消を求めたケースが解説されています。

そこでは、共有物を物理的に分割することが難しい場合や、分割によって不動産の価値が損なわれる場合などに、価格賠償による解決が検討されることが説明されています。

重要なのは、

「相手が売却に反対しているから、共有状態を永久に続けなければならない」わけではない

という点です。

ただし、具体的な分割方法は不動産の性質、共有持分、当事者の希望、支払能力などによって異なります。

また、遺産分割が終わっていない相続財産と、今回のモデルケースのように遺産分割後に確定した持分を共有している不動産では、利用すべき手続が異なる場合があります。

相続前後の権利関係を確認せず、いきなり共有物分割訴訟を検討することは避けるべきです。


自分の持分だけを第三者へ売却することはできる?

共有者は、原則として自分の共有持分を処分することができます。

そのため、マンション全体を売却することにほかの共有者が反対していても、自分の持分だけを第三者へ売却するという選択肢があります。

ただし、ここには注意点があります。

例えば、

マンション全体の市場価格が2,400万円。

持分が2分の1。

だからといって、

持分だけを必ず1,200万円で売却できるとは限りません。

共有持分だけを取得しても、買主はマンション全体を自由に売却できるわけではありません。

そのため、買い手が限定され、価格にも影響する可能性があります。

また、共有持分を第三者へ売却すると、残された共有者は見知らぬ第三者と共有関係になる場合があります。

持分だけの売却は、価格だけでなく、その後の共有関係への影響も考えて判断する必要があります。


共有名義の投資用マンションで特に注意したい3つのリスク

①相続が繰り返されると共有者が増える可能性がある

最初は兄弟2人の共有でも、その後さらに相続が発生すれば、権利関係が複雑になる可能性があります。

共有者が増えるほど、売却や管理について意思決定が難しくなることがあります。

②家賃収入と費用負担でも揉めやすい

投資用マンションでは、家賃収入だけでなく、

管理費、

修繕積立金、

固定資産税、

設備交換費、

原状回復費

などが発生します。

誰が費用を立て替えるのか。

家賃をどの口座で受け取るのか。

費用精算をどうするのか。

こうしたルールを決めていないと、共有者間で新たなトラブルになる可能性があります。

③売却したいタイミングが一致しない

一方は、

「今すぐ売却したい」

もう一方は、

「あと10年保有したい」

と考えるかもしれません。

投資用不動産では、所有者ごとに資金需要や投資方針が異なることが、共有トラブルの大きな原因になります。


相続登記を放置している場合は別の問題も発生する

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。

相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。

また、遺産分割によって不動産を取得した場合にも、別途登記申請の義務が問題になります。

正当な理由なく義務に違反した場合には、過料の対象となる可能性があります。

そのため、相続した投資用マンションについては、

「誰が所有者なのか」

「相続登記が完了しているのか」

を早い段階で確認することが重要です。


要点整理

相続した投資用マンションが共有名義になっている場合、マンション全体を通常の売買で第三者に売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一方、共有者は原則として自分の持分を処分でき、協議がまとまらない場合には共有物分割請求が検討されることがあります。

共有不動産の売却トラブルでは、次の順番で整理します。

  1. 相続登記と現在の所有者を確認する
  2. 共有持分の割合を確認する
  3. 遺産分割が完了しているか確認する
  4. 現在の市場価格を査定する
  5. 家賃収入と維持費を整理する
  6. 各共有者の希望を確認する
  7. 全体売却と持分買取を比較する
  8. 持分売却の条件を検討する
  9. 協議がまとまらなければ法的手続を検討する

特に重要なのは、「共有名義だから売れない」と諦めるのではなく、共有状態をどのように解消できるかを検討することです。


投資用不動産を相続するときに考えたいこと

投資用マンションを相続する場合、兄弟で公平に分けようとして、安易に共有名義にするケースがあります。

しかし、

「公平に持分を分けること」と「将来トラブルにならないこと」は同じではありません。

例えば、

不動産は一人が取得し、ほかの相続人へ金銭を支払う方法、

不動産を売却して現金を分ける方法、

ほかの相続財産と組み合わせて分ける方法

なども検討できます。

相続時点で、

「将来売却するときにどうするか」

まで考えておくことが重要です。


FAQ|共有名義の投資用マンションに関するよくある質問

Q1.兄弟で2分の1ずつ所有しています。兄だけの判断で売却できますか?

マンション全体を通常の売買で第三者へ売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。ただし、自分の共有持分だけを処分することは原則として可能です。

Q2.弟が売却に反対しています。裁判で売却できますか?

協議がまとまらない場合、共有物分割請求を検討できることがあります。ただし、裁判所がどのような分割方法を選択するかは個別事情によって異なり、必ず競売や希望価格での売却になるわけではありません。

Q3.共有持分2分の1なら、マンション価格の半額で売れますか?

必ずしもそうではありません。共有者間で持分を買い取る場合と、第三者へ持分だけを売却する場合では価格が異なる可能性があります。物件全体の価格、持分割合、買主、権利関係などを踏まえた評価が必要です。

Q4.相続したマンションの家賃収入は兄弟で半分ずつ受け取るものですか?

共有持分や当事者間の合意、賃貸借契約等を確認する必要があります。一般に共有持分に応じた収益配分が問題になりますが、費用負担や精算方法も含めて整理することが重要です。

Q5.まだ遺産分割協議が終わっていません。共有物分割請求をすればよいですか?

遺産分割前の相続財産については、原則として遺産分割の手続を検討する必要があります。遺産分割後の通常の共有状態とは扱いが異なる場合があるため、まず現在の権利関係を確認してください。


相続した投資用マンションを売却できずに悩んでいる方へ

「兄弟で共有名義にしたが、売却について意見が合わない」

「自分は売却したいのに、相手が反対している」

「共有持分だけでも売却できるのか知りたい」

「相続したワンルームマンションの適正価格が分からない」

「家賃収入や修繕費の分担で揉めている」

このような問題は、単に不動産の価格を調べるだけでは解決しない場合があります。

重要なのは、

現在の権利関係を確認すること。

不動産の市場価格を把握すること。

共有者それぞれの希望を整理すること。

そして、

売却・持分買取・共有関係の解消という選択肢を比較すること。

一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用不動産の売却や共有関係に関するお悩みについて、状況整理のためのご相談を受け付けています。

相続した投資用マンションについて、

登記事項証明書、

遺産分割協議書、

賃貸借契約書、

家賃収入、

管理費・修繕積立金、

売却査定、

共有者との協議状況

などを確認し、どのような選択肢が考えられるかを整理します。

「共有名義だから売却できない」

と諦める前に、現在の権利関係と不動産価値を整理してみてはいかがでしょうか。

共有不動産の問題は、時間が経過することで権利関係がさらに複雑になる場合があります。

売却を検討している段階でも、共有者との話し合いが難しくなっている段階でも、早めに状況を整理することが重要です。

投資用マンションの共有・相続・売却に関するお悩みは、一般社団法人 不動産トラブル解決協会へご相談ください。

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