投資用マンションのローンが否決されたのに契約解除できない?「ローン特約」でトラブルになった解決事例


結論|ローン否決=自動的に契約解除、とは限らない

投資用ワンルームマンションを契約した後、

「ローン審査に落ちたので契約をやめたい」

と申し出たところ、不動産会社から、

「まだ別の銀行があります」

「もう1社申し込んでください」

「ローンが1社否決されただけでは解除できません」

「解除するなら違約金が必要です」

と言われるケースがあります。

この場合に重要なのが、

ローン特約(融資利用特約)

です。

ただし、

「銀行に落ちた=必ず無条件で解除できる」

わけでも、

「不動産会社が紹介できる銀行が残っている限り解除できない」

わけでもありません。

最初に確認するのは、売買契約書・重要事項説明書に記載された、

金融機関、融資額、金利等の条件、申込期限、融資承認期限、解除期限、解除方法

です。

東京都も、ローン特約をめぐるトラブルでは、契約書・重要事項説明書の具体的な記載内容を確認することが重要だと案内しています。


3,180万円の投資用ワンルームを契約後、銀行2社から融資否決

34歳の会社員Aさんは、不動産会社から東京都内の中古ワンルームマンションを紹介されました。

販売価格は、

3,180万円。

営業担当者から、

「会社員ならローンは問題ないと思います」

「提携金融機関があるので融資はこちらで進めます」

と説明され、売買契約を締結しました。

Aさんは自己資金を多く入れるつもりはなく、

投資用不動産ローンが利用できることを前提

に購入を決めています。

契約後、営業担当者の案内でX銀行へ申し込みました。

しかし結果は、

融資不承認。

営業担当者から、

「別の銀行なら通る可能性があります」

と言われ、Y銀行にも申し込みました。

ところが、

Y銀行も不承認。

そこでAさんは、

「ローンが組めないので、ローン特約で契約を解除したいです」

と伝えました。

すると営業担当者から、

「まだ申し込める銀行があります。ローン特約では解除できません」

と言われました。

さらに、

「どうしても今やめるなら、通常の契約解除になるので違約金が発生する可能性があります」

と説明されます。

Aさんは、

「ローンが通らないのに、なぜ物件を買わなければならないのか?」

と困惑しました。


ローン特約とは何か?

不動産投資初心者が必ず覚えておきたい用語です。

目次

ローン特約の簡潔な定義

ローン特約とは、買主が予定していた融資を一定の条件で受けられなかった場合に、売買契約を解除できるようにするための契約条項です。

ただし、

「融資が通らなかったら何でも解除できる」

という意味ではありません。

実際には契約書等に、

どの金融機関なのか、

借入予定額はいくらか、

融資条件は何か、

いつまでに承認を得るのか、

いつまでに解除するのか、

どのような方法で解除するのか

などが記載されます。

したがって、

ローン特約は「ある・ない」だけでなく「何と書いてあるか」が重要

です。


【問題点①】「都市銀行等」としか書いていなかった

Aさんが改めて重要事項説明書を確認すると、融資欄には、

金融機関:都市銀行等

借入予定額:2,900万円

借入期間:35年

などと記載されていました。

特定の銀行名ではありません。

ここで問題になります。

X銀行とY銀行が否決したとしても、

「都市銀行等」という記載がどこまでの金融機関を想定しているのか。

何社まで申し込む必要があるのか。

金利が大きく違う金融機関でも申し込む必要があるのか。

こうした点が曖昧になっていました。

実際、東京都が2026年1月16日更新で公開している相談事例にも、重要事項説明書の金融機関欄が**「都市銀行等」**となっており、複数行から不承認となった後に「まだ他の銀行へ申し込める」と言われ、ローン特約による解除を巡ってトラブルになったケースが掲載されています。


【問題点②】ローン特約には「期限」がある

Aさんが次に確認したのは、

融資承認取得期限

と、

契約解除期限

でした。

ここは非常に重要です。

例えば、

融資承認取得期限が10月10日、

ローン特約による解除期限が10月15日

と定められているとします。

この場合、

「銀行の審査結果を待っているうちに解除期限を過ぎてしまった」

というトラブルが起こり得ます。

したがって、

「ローン審査中だから大丈夫」

ではありません。

融資が難しいと分かった時点で、

契約書に記載された期限を確認する

必要があります。


【問題点③】「もっと金利の高い銀行なら通る」と言われたら?

投資用不動産では特に注意したいポイントです。

例えば、購入時には、

金利1.8%程度

を前提に収支計算していたとします。

ところが最初の金融機関で否決。

不動産会社から、

「金利3.5%の金融機関なら通る可能性があります」

と言われたらどうでしょうか。

融資そのものは受けられるかもしれません。

しかし、

投資としての収支は全く違ってくる可能性があります。

3,000万円前後を長期間借りる場合、金利条件の違いは月々の返済額や総返済額に大きく影響します。

したがって、

「融資が通るか」だけでなく、「契約時に想定していた条件の融資なのか」

を見る必要があります。


【解決までの流れ①】営業担当者ではなく「契約書」を確認

Aさんは営業担当者との電話を続ける前に、

売買契約書、

重要事項説明書、

ローン申込書、

金融機関からの審査結果、

営業担当者とのメール・LINE

を集めました。

そして、

①利用予定の金融機関

②借入予定額

③金利等の融資条件

④融資承認期限

⑤ローン特約による解除期限

⑥解除方法

を抜き出しました。

不動産トラブルでは、

「営業担当者が何と言っているか」より先に「契約書に何と書いてあるか」を確認する

ことが重要です。


【解決までの流れ②】銀行の不承認記録を保存

次に、

X銀行、

Y銀行

から融資が承認されなかったことが分かる資料を保存しました。

ここでも、

「銀行からダメと言われました」

だけではなく、

どの金融機関へ、いつ、どの条件で申し込み、どのような結果になったか

を整理します。

ローン特約を巡って争いになった場合、

買主が本当に融資を得るための手続きを行ったのか

が問題になることもあるためです。


【解決までの流れ③】ローン特約の解除期限を最優先で確認

Aさんが契約書を確認すると、

ローン特約の解除期限まで、

残り6日。

ここで、

「不動産会社とゆっくり話し合ってから決めよう」

と考えるのは危険です。

期限のある契約問題では、

時間そのものが重要な要素

になります。

Aさんは、口頭だけでなく書面・メール等で、

ローン特約による解除を希望していること

を明確にしました。

具体的な解除方法や効力については契約内容によるため、必要に応じて早期に専門家へ確認します。


【解決までの流れ④】「違約金」と「ローン特約による解除」を分ける

営業担当者から、

「契約をキャンセルすると違約金がかかります」

と言われても、

そこで諦めてはいけません。

まず、

何を根拠とする解除なのか

を確認します。

例えば、

ローン特約に基づく解除なのか。

手付解除なのか。

債務不履行を理由とする違約解除なのか。

これらは同じではありません。

ローン特約の条件を満たして契約を解除する場合と、

単純に買主の都合で購入をやめる場合では、

扱いが異なる可能性があります。

「キャンセル=違約金」

と一括りにしないことが重要です。


【解決までの流れ⑤】行政・専門家へ相談

Aさんは、

契約書、

重要事項説明書、

融資申込資料、

融資否決の資料、

不動産会社とのやり取り

をまとめて相談しました。

東京都では、2025年4月7日から投資用不動産特別相談窓口を設けており、投資用不動産のトラブル相談を受け付けています。法律的見解が必要な場合には、不動産取引に詳しい弁護士の無料相談を紹介するとしています。

東京都「投資用不動産特別相談窓口」

また東京都の不動産相談ページは2026年3月4日に更新され、現在も不動産取引に関する相談窓口を案内しています。


【解決結果】期限内に解除意思を示し、違約金請求を回避

今回のケースでは、

契約書類と融資審査結果を確認した結果、

Aさんが契約時に予定していた融資条件では承認を得られていないこと、

ローン特約の解除期限内であること

などを整理。

期限内に解除意思を明確にし、不動産会社との協議を進めました。

結果として、

高金利の別金融機関へ次々申し込むのではなく、ローン特約に基づいて売買契約を終了する方向で整理できました。

このケースでは違約金を負担せずに契約関係を終了しています。

ただし、

「銀行2社に落ちれば必ず解除できる」

という意味ではありません。

どの金融機関・条件を前提にしていたのか、ローン特約がどのように定められているのか、買主が必要な手続きを行ったかなどによって結論は変わります。


投資家が知っておきたい「停止条件型」と「解除権留保型」

ローン特約について調べると、

停止条件型

解除権留保型

という言葉を見ることがあります。

簡単に整理すると、

停止条件型は、予定した融資が成立することを契約の効力等に関係させる設計。

解除権留保型は、融資が得られなかった場合に、一定の条件・期限で買主が解除できるようにする設計です。

実際の契約がどちらに当たるのか、どのような効果が生じるのかは契約条項によって異なります。

投資家として重要なのは名称を暗記することではなく、

「融資が否決された場合、この契約は自動的にどうなるのか。それとも自分から解除通知が必要なのか」

を契約前に確認することです。


投資用不動産では「融資条件」も投資条件

ワンルームマンション投資では、

物件価格、

家賃、

利回り

だけを見がちです。

しかし、

金利

借入期間

頭金

元利均等・元金均等

繰上返済条件

なども投資収支を左右します。

つまり、

「3,000万円借りられる」ことと「3,000万円を合理的な条件で借りられる」ことは別問題

です。

融資が通ったからといって、その投資が成立するとは限りません。



再発防止|契約前に営業担当者へ確認する5つの質問

投資用マンションの売買契約を締結する前に、最低限、

「どの金融機関の融資を予定していますか?」

「借入予定額はいくらですか?」

「想定金利は何%ですか?」

「融資が否決された場合、いつまでに解除できますか?」

「何社まで申し込む必要がありますか?」

を確認しましょう。

そして、その回答を、

口頭だけでなく契約書・重要事項説明書でも確認する

ことが重要です。

「提携ローンがあるので大丈夫です」

だけで3,000万円前後の契約を決めるのは避けるべきです。


FAQ

Q1.投資用マンションのローンに落ちたら必ず契約解除できますか?

必ずとは限りません。ローン特約の有無、金融機関、借入額、解除期限、解除方法、買主側の手続状況などによって判断が異なります。まず売買契約書と重要事項説明書を確認してください。

Q2.銀行2社に落ちました。さらに別の銀行へ申し込む必要がありますか?

一律には判断できません。契約書に予定金融機関がどのように記載されているかが重要です。東京都が公開する相談例でも、複数行で不承認となった後、「まだ他の銀行に申し込める」と言われたローン特約トラブルが紹介されています。

Q3.ローン特約には期限がありますか?

契約で融資承認期限や解除期限が設定されていることがあります。期限を過ぎると扱いが変わる可能性があるため、融資不承認が判明したらすぐ契約書を確認してください。

Q4.不動産会社から高金利の別ローンを紹介されました。申し込まなければいけませんか?

契約内容によります。少なくとも、当初想定より金利が高い場合は、月々の返済額・年間キャッシュフロー・総返済額を再計算すべきです。ローン特約上その金融機関への申込みが必要なのかについては、契約条項を確認してください。

Q5.「解除すると違約金」と言われました。払わなければいけませんか?

直ちに支払義務があるとは判断できません。ローン特約による解除なのか、手付解除なのか、契約違反による解除なのかで扱いが異なります。契約書と事実関係を確認し、必要に応じて弁護士等へ相談してください。



「ローンが通らないのに契約解除できない」と言われている方へ

投資用マンションのローントラブルでは、

「審査に落ちたから買えない」

という事実だけでは問題を整理できません。

確認したいのは、

どの金融機関を予定していたのか。

いくら借りる予定だったのか。

どの金利・期間を想定していたのか。

実際にどの金融機関へ申し込んだのか。

いつ否決されたのか。

ローン特約の期限はいつなのか。

解除方法はどう定められているのか。

です。

特に、

「銀行に落ちたのに別の銀行へ次々申し込むよう言われている」

「当初より大幅に高い金利のローンを勧められた」

「ローン特約では解除できないと言われた」

「解除するなら違約金を払えと言われた」

という場合は、売買契約書・重要事項説明書・融資申込書・審査結果・LINE・メールなどを廃棄せず保管してください。

一般社団法人 不動産トラブル解決協会では、投資用ワンルームマンションについて、契約内容、融資条件、現在収支、ローン残高、賃貸状況、現在の査定価格などを整理し、問題点と今後の選択肢を検討するための相談を受け付けています。

すでに物件の引渡しを受けている場合には、

「契約時・融資時に問題がなかったか」

と、

「現在この物件を保有し続けることが合理的か」

を分けて考えることも重要です。

ローントラブルで最も避けたいのは、

「不動産会社と話しているうちに契約上の期限を過ぎてしまうこと」。

まず契約書を開き、融資承認期限と解除期限を確認することから始めてください。

目次